水道代が払えない場合、支払期限の延長や減免制度の利用など対処法は様々あります。
水道代を滞納しても、すぐに給水停止となるわけではありません。
給水停止までに自分にあった対処法を見つけて、早めに支払いの目途を立たせる必要があります。
本記事では、水道代が払えない場合の対処法をご紹介します。
この記事を読んでわかること
- 滞納から給水停止までは約3か月の猶予がある
- 収入の減少により支払いが困難な場合は減免制度が利用できる
- 滞納期間が長引くほど遅延損害金が膨らむため早めの対処が必要
- どうしても支払えない場合は債務整理も検討を
水道代が払えなくても焦らず、冷静に対処法を見つけていきましょう。
水道代は上水道料金と下水道料金の両方を支払う必要がある
水道代は上水道料金と下水道料金を合わせたもので、その両方を支払う必要があります。
上水道料金 | 水道の蛇口をひねると出てくる綺麗な水の使用量に対して請求される料金。 基本料金と従量料金で構成される。 |
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下水道料金 | 使用した水を綺麗に浄化するために必要な水や装置に対して請求される料金。 |
上水道料金の基本料金は水道管の太さごとに金額が決まっている一方で、従量課金は使用した水の量に応じて料金が上がっていきます。
この上水道を使ったときに出る汚水を浄化するために必要な料金が、下水道料金です。
上水道料金と下水道料金は2か月に1度合算して請求されるため、それぞれ別々に支払う必要はありません。
なお令和3年度末時点での下水処理人口普及率は80.6%と、多くの地域で下水道が整備されていますが、まだ下水道が整備されていない地域もあります。
参照元:下水道整備の推進‐国土交通省
下水道が整備されていない地域は浄化槽の設置によって下水を処理しているため、下水道料金はかかりません。
水道代が払えない時の対処法5選
水道代が支払えない場合の対処法は、以下の5つが挙げられます。
- 福祉的援助を受けている場合の減免制度を利用する
- 水漏れによる料金増加に対する減免制度を利用する
- 一部払いや分割払いを申請する
- 金融機関からお金を借り入れて支払いに充てる
- 債務整理をおこない債務を圧縮する
なお市町村によって減免制度の内容や支払い方法が異なる場合もあるため、必ず管轄区域の水道局が発信する情報を確認してください。
それでは、対処法の詳細を順番に説明していきます。
福祉的援助を受けている場合の減免制度を利用する
生活保護などの福祉的援助を利用している人は、減免制度を利用できる可能性があります。
たとえば東京都水道局では、以下の条件に該当する人は減免制度を利用できます。
引用元:水道料金・下水道料金の減免のご案内‐東京都水道局
- 生活保護法による、「生活扶助」、「教育扶助」、「住宅扶助」、「医療扶助」又は「介護扶助」を受給されている方
- 「児童扶養手当」又は「特別児童扶養手当」を受給されている方
- 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律による以下の給付を受給されている方
- 1生活支援給付
- 2住宅支援給付
- 3医療支援給付
- 4介護支援給付
減免内容は、以下のとおりです。
水道料金 | 基本料金と1か月当たり10m³までの従量料金の合計額に100分の110を乗じて得た額 |
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下水道料金 | 1か月当たり8m³までの料金 |
1か月に使っている水道使用量は請求書に記載されているため、どれくらい減額されるのか確認できます。
請求書が手元にない人は、以下の平均使用水量を参考にしてください。
世帯人員別 1か月あたりの平均使用水量
引用元:水の上手な使い方‐東京都水道局
世帯人員 使用水量 1人世帯 8.1m³ 2人世帯 14.9m³ 3人世帯 19.9m³ 4人世帯 23.1m³ 5人世帯 27.8m³ 6人以上 34.1m³
なお福祉的援助を受けている場合に利用できる減免制度は、市町村によっては高齢者や障がい者なども対象となる場合があります。
利用している水道局や市町村の公式サイトなどから、対象者を確認してみましょう。
水漏れによる料金増加に対する減免制度を利用する
水漏れによる利用量の増加で水道代が払えなくなった場合は、減免制度を利用できます。
地中や壁の中にある水道管からの漏水など発見が困難な場合に限られるため、容易に発見できる蛇口からの漏水や蛇口の閉め忘れによる漏水は対象外です。
市町村が定める一定の条件を満たすと、漏水により増えた水量の一部が減量されます。
減免を受けるためには漏水の工事後に減免申請書を水道局に提出しますが、市町村によっては工事業者を指定しているところもあります。
漏水した場合の水道料金の減免制度を受けるには、飯能市指定給水装置工事事業者に工事を実施していただく必要がございます。宅内で漏水された場合には、まず飯能市指定給水装置工事事業者へご連絡をお願いします。
引用元:漏水した場合の水道料金の減免制度について‐飯能市
漏水による減免制度を利用する場合は、地域の水道局に漏水減免制度の詳細を確認してから工事するようにしましょう。
一部払いや分割払いを申請する
市町村によっては、水道代の一部払いや分割払いに対応している自治体もあります。
収入が大幅に減少しているなど、一時的に水道料金等の支払いが困難な方に対して、引き続き、支払いの猶予や分割支払いなどの相談を行っています。
引用元:水道料金・下水道使用料の基本料を減免します‐伊丹市上下水道局
たとえば分割払いの場合、2か月に1回の納付金額を半分に分割して1か月に1回ずつの納付にするなどの対応を受けられます。
水道代の支払い総額は変わりませんが、1回に納める額が小さければ支払える可能性がある場合は申請を検討しても良いでしょう。
金融機関からお金を借り入れて支払いに充てる
減免制度や分割払いなどを駆使しても水道代を支払えない場合は、金融機関からお金を借りるのも方法のひとつです。
水道代といった少額のお金を借り入れたい場合は、数千円単位で借り入れできるカードローンを利用するといった選択肢もあります。
大手消費者金融のカードローンであれば、インターネットから申し込むと最短即日での借り入れも可能です。
借り入れると利息を支払わなければならない点に注意が必要ですが、契約後1か月は無利息で借り入れられるカードローンもあるため、うまく活用しましょう。
債務整理をおこない債務を圧縮する
支払いがどうしてもできない場合は、借金を免除できる債務整理を検討しましょう。
債務整理の方法は、以下の4種類が挙げられます。
任意整理 | 債務者と債権者が直接話合いをして返済方法などについて新たな取り決めをする手続き。 |
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特定調停 | 裁判所が間に入って債務者と債権者の話合いを斡旋することによって借金の返済方法を決める手続き。 話し合いの手続きとなるため、債権者の合意を得られなければ調停を成立させることはできない。 |
個人再生 | 全債権者に対する返済総額を少なくし、少なくなった後の金額を原則3年間で分割して返済する再生計画を裁判所が認めると、残りの債務などが免除される手続き。 裁判所に申し立てることで手続きが開始されるが、安易な手続きではないため手続きは弁護士へ依頼することが推奨される。 |
自己破産 | 自分の財産や収入をすべて充てても債務を支払うことができなくなった場合に、自分の財産を強制的にお金に換えて、すべての債権者の債権額に応じて平等に分配して債務を清算する手続き。 自己破産する場合は、破産申立書を自分の住所地を管轄している地方裁判所に提出する。 破産手続きを請け負う破産管財人が選任されることもある。 |
上記のうち、水道代の支払期間の猶予または支払金額の圧縮が期待できる方法は、個人再生と自己破産です。
個人再生は再生計画通りに返済できることが前提
個人再生では債務額の縮小が期待できますが、そのためには3年以内に返済する見通しを立てた再生計画を裁判所に提出して、認められる必要があります。
そして再生計画をもとに返済が完了してはじめて、債務の圧縮分が免除されます。
しかし、再生計画通りに返済できず途中で返済が滞るなどした場合、再生計画は取り消しです。
再生計画の取り消しによって元の債務を全額を支払う義務が復活する場合もあるため、個人再生は十分に計画を検討してからの手続きが求められます。
自己破産は生活費を除いた財産すべてを債務の清算にあてる
自己破産をすると、ほぼすべての財産を強制的に換金してすべての債務を清算します。
債務者の今後の生活を立て直す費用として、法律により99万円以下は手元に残せますが、一定の財産は失われることを覚悟しなくてはなりません。
参照元:破産法34条3項1号‐e-GOV
自己破産は以下の情報をもって官報に掲載されるため、自己破産した事実が社会に公表される点にも注意が必要です。
- 氏名
- 住所
- 手続の開始決定年月日
- 手続をした裁判所
加えてクレジットカードやカードローンの申し込みで確認される信用情報に、自己破産した記録が残ります。
信用情報を扱う指定信用情報機関によりますが、自己破産した情報は5年または7年に渡って記録されるため、その間は借り入れができません。
このように、自己破産は債務をすべて清算できる代わりに代償も大きいため、申請する際は入念な検討が必要です。
水道代の滞納から給水停止までは約3か月
水道代の滞納から給水停止までの流れは、以下のとおりです。
- 水道代の滞納
- 督促状の送付
- 催告状の送付
- 停止通知書の送付
- 給水停止
このように、水道代を滞納するとただちに給水停止されるわけではなく、給水停止に至るまでには段階があります。
督促状や催告状、停止通知書が送付され、それでも支払えなかった人が給水停止となります。
水道代を滞納してから給水停止に至るまでの期間は市町村によって異なりますが、約3か月です。
たとえば横須賀市上下水道局では、督促状を発行してから概ね3か月で停水予告通知書が発行されます。
催告書発行から概ね2か月(当該未納分の納入通知書納入期限から概ね3~4か月または口座振替不能から概ね4か月、督促状発効から概ね3か月)で停水予告通知書を発行し、給水停止の対象となっている旨を事前に通知します。
引用元:3.料金滞納による給水停止‐横須賀市上下水道局
水道代を支払えなくなったら、通告があるうちに対処することが大切です。
水道の給水停止は違法ではない
水道代を支払わないと給水停止されるものの、そもそも生命活動の維持に欠かせない水の供給停止は憲法に違反するのではないかと考える人もいます。
しかし結論からいうと、水の給水停止は違法ではありません。
まず憲法第25条には、以下の記載があります。
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
引用元:日本国憲法第25条‐g-GOV
一方で、水道法第15条3項では給水停止に関して以下のように定められています。
水道事業者は、当該水道により給水を受ける者が料金を支払わないとき、正当な理由なしに給水装置の検査を拒んだとき、その他正当な理由があるときは、前項本文の規定にかかわらず、その理由が継続する間、供給規程の定めるところにより、その者に対する給水を停止することができる。
引用元:水道法第15条3項‐g-GOV
水道事業は利用者から支払われる水道料金で運営されており、水道代を支払わない人に対する水道の供給は、水道事業の運営の妨げとなります。
加えて水道代を支払っている利用者との公平性も失われることから、水道代を滞納した人に対しては水道の給水停止が認められています。
なお、水道代が支払えないほど生活に困窮している場合は生活保護など福祉的支援が受けられる可能性があるため、利用を検討しましょう。
遅延損害金や差し押さえが発生する場合も
水道代を滞納すると給水停止はもちろん、以下のような処罰が科される場合もあります。
- 遅延損害金や延滞金が発生する
- 財産が差し押さえられる
- 信用情報に延滞履歴が載る
滞納が続けば続くほど処罰の程度が大きくなっていくため、水道代の滞納は可能な限り早めに解消しましょう。
具体的な処罰の内容について、以下で説明していきます。
遅延損害金や延滞金が発生する
水道代を滞納すると、市町村によっては水道代に加えて遅延損害金や延滞金を支払わなければならない場合があります。
たとえば、枚方市の水道代を期限までに支払わなかった場合、年3%の遅延損害金が発生します。
期間 | 利率 |
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平成31年4月1日~令和2年3月31日 | 年5% |
令和2年4月1日~ | 年3% |
滞納を続けると遅延損害金が膨らんでいくため、水道代は可能な限り早めに支払いましょう。
財産を差し押さえられる
給水停止を行っても水道代を支払わない人や未納のまま引越した人に対しては、裁判所を通じて財産を差し押さえられる場合もあります。
「督促状」を送付後、催告などを行っていますが、それでもお支払いいただけない場合は、支払っている方との不公平感が生じないよう、財産等の差押えを行う場合があります
引用元:料金を支払わないと、差押えされることがあるのですか‐旭川市
たとえば預金口座に残高がある場合は、裁判所から銀行に差押命令が下ります。
銀行は命令に従って、水道代が支払われるまで銀行口座から出金ができないようにします。
銀行口座に水道代を支払える金額が残っている場合は、差し押さえられる前に速やかに支払いましょう。
信用情報に延滞履歴が載る
水道代をクレジット払いにしていると、引き落としができなかった場合はクレジットカードが利用できなくなるのはもちろん、延滞した旨が信用情報に記録されます。
信用情報とは、借入先や返済履歴など個人の信用を確かめるための情報のことです。
延滞した記録が信用情報に載っていると、クレジットカードやローンといった借り入れに関する審査に通らなくなります。
たとえば、指定信用情報機関のひとつである株式会社シー・アイ・シーでは、クレジット情報は5年を限度として保存されます。
参照:あなたとCIC‐CIC
このように延滞すると数年は信用情報に残り続けるため、長期間に渡りお金の借り入れはできません。
クレジットが利用できなくなるうえ今後の借り入れに関しても不利となるため、延滞する前に早急に対処する必要があります。
水道代の時効を待つのはリスクが高い
水道代を支払わず滞納し続けた場合、5年を超えると支払いの義務がなくなるといった時効が存在します。
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
引用元:民法第166条‐e-GOV
時効により水道代を支払う必要がなくなると考えられがちですが、時効を成立させるためには時効の援用をする必要があります。
時効の援用とは、時効の利益を受ける者が時効の完成を主張することです。
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
引用元:民法第145条‐e-GOV
つまり、時効は自動的に成立するわけではなく、債務者自らが時効の完成を主張する必要があるということです。
時効の完成を主張するには、時効を確認してから債権者に時効援用通知書を送付して、時効を認めさせます。
もし期間を誤って時効前に通知書を送付した場合には、債権者が支払い義務を認知するため時効が更新される可能性もあり、リスクは高いといえるでしょう。
このように、時効の確認や通知書の作成といった援用手続きをする必要があるうえ時効が更新される恐れもあるため、水道代の時効を待つのはおすすめできません。
支払いを免れようとせず、減免制度などの対処法を活用して水道代を支払っていきましょう。
水道代は減免制度を利用して支払える!給水停止までに対処しよう
水道代を支払えなくなっても、福祉的援助を受けている人は減免制度が利用できます。
減免制度が適用されない人も、一部払いや分割払いであれば納められる場合は窓口に相談すると応じてもらえる可能性もあります。
ただし、市町村によって減免内容や取り扱っている制度には違いがあるため、必ず管轄内の水道局が発信する公式情報を確認してから行動するようにしてください。
滞納が続くと給水停止はもちろん、遅延損害金が発生したり財産の差し押さえがおこなわれたりと、良いことはひとつもありません。
給水停止までの約3か月の間に対処法を見つけて、早めに支払いの見通しを立てることが大切です。